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Vol.9 北本トマト

北本の名産は「トマト」です。皆さんもご存じ「トマトカレー」は今やレトルトにもなり北本市以外でも見かける事もある程です。

そもそもなんでトマト?と思われる方もいらっしゃるのではないですか?

現在のトマト生産・出荷量の全国第1位はどこかと言うと熊本県。2位北海道。3位茨城県。

では、埼玉県はと言うと・・・14位。

う~~ん、では埼玉県の中ではどうか?

埼玉県内のトマト生産・出荷量で検索すると北本は17位・・・

更になんでトマト?の疑問が広がった方もいるのではないでしょうか。

トマト押しになったのは、大正から昭和にかけて北本でトマトを多く栽培していた過去がある為です。

実に農家の7割がトマト生産に参加、「石戸トマト」の名前で当時珍しいトマトを栽培するだけでなく、アメリカへ出荷するための加工工場まであったんです。

国内では、東京の精養軒、千疋屋、帝国ホテルなど、名だたる高級店へ石戸トマトを卸していました。

 時代は昭和2年。当時ほとんどの日本人はトマトの存在さえ知らなかったし、生で食べていません。

その中、日本で最新の設備を備え、トマトクリームやケチャップの工場を建て、現在のカゴメのような状態で輸出用の缶詰めを作っていたわけです。

とは言え、調べた所、初めて日本産トマトケチャップを作ったのは天下のカゴメ株式会社でした。

残念ながら戦争で工場は閉鎖となりましたが、戦争がなかったら日本中の食卓に「石戸トマトケチャップ」が常備されていたかもしれません。

まあ、そんな華々しいトマト生産・加工日本一の過去から、現在北本はトマト押しになっている訳です。

そこで更なる疑問。

トマトの存在さえ知らない日本にあって、アメリカにトマトの種が売れるとか、加工した缶詰が売れるとか、誰が北本、石戸に吹き込んだのでしょうか?

大正から昭和にかけて日本の食卓も西洋化が進んで、この頃から全国的にトマトの作付けが飛躍的に増えたそうです。石戸の誰かに先見の明があったとみるべきか。

結局誰が石戸でトマト栽培をするよう進言したかは謎ですが、100年経った今でもトマト押しをしている北本です。by Ryu